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京都地方裁判所 昭和60年(わ)904号 判決

本籍

京都市西京区桂乾町六九番地

住居

右同所

会社役員

乗越清一

大正九年一月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官西村正男出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役五月及び罰金六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金八五〇〇円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する)被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己の所有する京都市西京区桂乾町一三番一の宅地、建物を昭和五八年六月二八日一億五、〇〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫、同連合会事務局次長渡守秀治及び松本善雄らと共謀の上、自己の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億四、一〇三万五、一二五円で、これに対する所得税額は三、九二五万七、八〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から一億八、〇〇〇万円の借入れをし、その債務について自己が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五八年八月一〇日一億三、〇〇〇万円履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月一四日、京都市右京区西院上花田町一〇番地の一所在所轄右京税務署において、同署長に対し、自己の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一、一五〇万円、総合課税の総所得金額は一〇七万五、〇〇〇円で、これに対する所得税額は二二八万七、六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額三、九二五万七、八〇〇円との差額三、六九七万二〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書

一  大蔵事務官作成の証明書(検二三号)

一  中川修、松本善雄、長谷部純夫、鈴木元動丸の各検察官に対する供述調書謄本

(法令の適用)

判示事実

所得税法二三八条刑法六〇条(懲役と罰金を併科)

労役場留置

刑法一八条

執行猶予

同法二五条一項(懲役刑につき)

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 西村清治)

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